2013年6月1日土曜日

「大神社展」と「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」~前編~


5月最後の日、上野の美術館を梯子をした。
少し疲れた。

パリに長く在住して美術関係のライターをしている友達が、
仕事で日本に帰ってきていて、
4月の末に日本を去る時に、いくつかの美術展のチケットを「よかったら使って」と送ってきた。

時折誘いあって一緒に美術展に出かける大学時代の友達を誘っていたが、
2人の都合がようやくついたのが31日だった。


「大神社展」チケット

「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」チケット

東京国立博物館の「国宝 大神社展」は、
これまで目にしたことのなかった神社の宝物や文化財を観ることができた。
「国宝・重文160件 神社パワー全開!」とあり、
全国の神社が協力しての大「神道美術」展になっていた。

東京国立博物館 「大神社展」
5月初旬には天皇・皇后両陛下もご来館されたそうだ




特に「神像」は珍しく興味深かった。
仏像はよく目にすることはあるが、神像は見たことがなかったと思う。
神像はもともと見せるものではないようで、通常はほとんどが非公開なのだそうだ。
仏像と異なって顔つきというか表情が豊かだった。
仏像は全てを超越した存在だから感情が表されることはない。
その点神様は自由なようである。
そういえばギリシャ神話の神々も全く好き放題やっているようだ。
古今東西の古の神々は皆そうなのだろう。
山や海や川、岩や木や水、太陽や雲や月、、、自然の中に神々が宿っているのだった。



神々は神道美術の画にも姿は直接には描かれない。
雲として舞い降りたりと、何かに姿を投じている。
神道美術では「風景」が信仰の対象として描かれているのだとか。
神社やそれを中心とした神域を描いた画をかけて礼拝することで実際にそこに行って礼拝したのと同じ効果があると考えられてきたとあった。
詳しくは東京国立博物館(トーハク)のブログが面白いので是非!1089ブログ」。

「大神社展」を堪能し、次に向かう。





次は東京都美術館の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 天才の肖像」である。
東京国立博物館から東京都美術館はすぐ近くである。
上野には他にも国立西洋美術館や上野の森美術館などがありミュージアムが多い。




ポスターのコピーは、「春です。レオナルドです。」
ミラノ アンブロジアーナ図書館・美術館所蔵の109点が展示されている。
レオナルドの絵としては看板となっている「音楽家の肖像」だけだ。
あとは「レオナルデスキ」というレオナルド工房の弟子や追随者のレオナルド一派の作品や
レオナルドの「アトランティコ手稿」である。
レオナルデスキの作品の多くはレオナルドの作品の模写や研究題材としたものだ。
「本家」と見比べてみたいものだ。
 手稿のほとんどは不明瞭だったり小さかったりして、視力の衰えも手伝って見るのに苦労した。

ポスター

ヴェスピーノ
「岩窟の聖母」
ヴェスピーノの「岩窟の聖母」はレオナルドの同作を模写した作品だそうだ。
レオナルドの「岩窟の聖母」は2点ある。
ロンドンのナショナルギャラリーとパリのルーヴル美術館が所蔵している。
その内のロンドンの方を正確に模写したとあった。


<参考>
レオナルド・ダ・ヴィンチ
「岩窟の聖母」
ロンドン ナショナルギャラリー所蔵

<参考>
レオナルド・ダ・ヴィンチ
「岩窟の聖母」
パリ ルーヴル美術館所蔵

下の「貴婦人の肖像」の作者は「ロンバルディア地方のレオナルド派の画家」とある。
名もなき画家の作品が素晴らしかった。
それもそのはずで、当初はレオナルドの作だとされていたそうだ。
その後様々な説を経て、現在はジョヴァンニ=アンブロージョ・デ・プレディス作の説が定着しているそうである。
この絵の構想にはレオナルド自身も携わっていたのではと推察されている。
レオナルドの素描「女性の横顔と眼の習作」も展示されていた。

ロンバルディア地方のレオナルド派の画家
(ジョヴァンニ・アンブロージョ・デ・プレディス?)
「貴婦人の肖像」

レオナルド・ダ・ヴィンチ
「女性の横顔と眼の習作」

レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子
「頭部の素描、作品リスト、肖像画への言及」・・メモ書き?
アトランティコ手稿 第888紙葉表

レオナルド・ダ・ヴィンチ
「複数の弩を装備した歯車の素描」
アトランティコ手稿 第1070紙葉表

ジャンピエトリーノ
「聖ロクスと奏楽天使のいる降誕」

ジャンピエトリーノ
「福音書記者聖ヨハネ」
ヨハネが女性的に描かれている

ベルナルディーノ・ルイーニ
「幼子イエスと子羊」

ベルナルディーノ・ルイーニ
「聖家族と洗礼者聖ヨハネ」

ベルナルディーノの上記の作品はレオナルドの「聖アンナと聖母子と幼子聖ヨハネ(習作)」をモデルに制作されたそうだ。
レオナルドのこの習作は当初はベルナルディーノが所有していたらしい。
現在はロンドン・ナショナルギャラリーにある。
ベルナルディーノはレオナルドの習作に聖ヨハネを加えて作品に仕上げている。

<参考>
レオナルド・ダ・ヴィンチ
「聖アンナと聖母子と幼子聖ヨハネ(習作)」

下の「洗礼者聖ヨハネ」もレオナルドの作品をモデルに制作されている。
このヨハネのモデルはレオナルドの愛弟子サライことジャン・ジャコモ・カプロッティだとか。
制作者も上記の「貴婦人の肖像」と同じく名もない画家となっていた。
いろいろな説のある作品なのだろう。
レオナルドの作品と比べると貧相で女性的な顔ながら腕は筋肉質で違和感が残った。
背景が描かれているのはモナリザ風を取り入れたのだろうか、、、。
先のジャンピエトリーノの聖ヨハネも女性的に描かれていた。
そういえば、レオナルドの「最後の晩餐」でもヨハネは非情に女性的に描かれており、
様々な憶測を生んでいる。
レオナルデスキでは聖ヨハネの捉え方に何か思惑があったのだろうか、、、。

ロンバルディア地方のレオナルド派の画家
「洗礼者聖ヨハネ」

<参考>
レオナルド・ダ・ヴィンチ
「洗礼者聖ヨハネ」
ルーヴル美術館

やっと、レオナルドの「音楽家の肖像」に出会った。
現存する唯一の男性肖像画だそうだ。
上の聖ヨハネに比べると、知的でどこか寂しげな表情だ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
「音楽家の肖像」

2つの美術展を見終わった。
東京都美術館にあるレストランで昼食を取ることにした。
美術館には何度も来ているがレストランは初めてだ。
ランチの真っ只中、12時半頃だったので20分程待って席に着くことができた。

食事を終わって窓の外を見ると日差しが強そうだった。
場所を移してお茶をとも思ったが、暑さを避けてそのままお茶にすることにした。
話が弾んで3時前に美術館を後にした。



「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」で観た「ヨハネ」が気になる。
「聖ヨハネ」について、~後編~に続けることにする。

<続く>





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