2012年12月29日土曜日

「シャルダン展」と水羊羹


1228日、師走の寒い日だった。
東京・丸の内に2010年に新しく開館した「三菱一号館美術館」に初めて行った。

「シャルダン展 静寂の巨匠 ~やさしい沈黙に、包まれる。~」を見るためだった。




仕事納めとあって人影もまばらだった。
広い歩道沿いには観光バスが止まっていた。
美術館の入口は通り沿いではなく商業ビルとの中庭に面してあるので
初来館者には少しわかりづらい。





三菱系の会社に勤めていた高校の同級生からある日メールが届いた。
「東京駅のステーションホテルに泊まって「シャルダン展」を観てきた。
 フェルメールに似たいい絵だった。機会があったら是非観るといい。」とあった。

この時は、上野の東京都美術館で開かれている「メトロポリタン美術館展」の方に興味があって
行くとも行かないとも返事をしていなかった。





ところが、
長らくパリに住んでいて美術関係のライターをしている友人夏目典子女史が、
「今回のシャルダン展は是非観ておいた方がいいです。
 これだけまとまった作品が集まることはまずないと思いますよ。」とメールで言ってきた。

彼女はそろそろ日本に帰ってくる準備をしているらしく、
最近は正月休みや夏休みに帰国してはしばらくの間日本に滞在している。
今回もそんなやりとりの中でシャルダン展は是非と推す。

こう薦められては心が動く。
そこに、相棒と孫が渋谷にフラダンスの衣装を買いに出かけるという。
相棒が孫にせがまれたようだ。
では、、、ということで、
途中まで一緒に行き東京駅まで足を延ばして「シャルダン展」を観ることにした。






三菱一号館は1894年に英国人の設計により建設され、1968年に老朽化で解体されていた。
2009年、40年の時を経て当時の設計のままに同じ地に復元されたそうだ。
そして2010年に三菱一号館美術館として開館されていた。

気になってはいたが、オープニングの展示会に行きそびれてから機会を逸していた。
「シャルダン展」が機会を与えてくれた。

美術館は幾つもの小さな部屋に分かれていてとても落ち着いた佇まいだった。
そんな雰囲気やレイアウトに静かな小作品がマッチしていた。








シャルダン(1699~1779)はロココ時代を生きたフランスの画家。
時代の画風とは一線を画し、穏やかで静謐な静物画を描き続けた。
今回の美術展はそんなシャルダンの38作品を集めた日本初の個展だそうだ。
内26作品が日本初公開だという。


「銀のコブレットとりんご」

「木いちごの籠」

「すももの籠」

「桃の籠とぶどう」

「桃の籠」

「すももの鉢と水差し」

「銀引きの銅鍋」

「台所のテーブル/食事の支度」

「配膳室のテーブル」

「肉のない料理」

「肉のある料理」

「昼食の支度/銀のコブレット」

「カーネーションの花瓶」

「死んだ野兎と獲物袋」

「野兎」

「ビリヤードの勝負」

「デッサンの勉強」

「画家ジョゼフ・アヴェドの肖像/錬金術師」

「羽根をもつ少女」

「良き教育」

「食前の祈り」

「買い物帰りの女中」

「病後の食事/思いやりのある看護人」

「セリネット」

フェルメールよりも人物の顔や表現が柔らかく感じた。
また、画面に差す光はほとんど感じない。
それが場面の起伏を抑制し、静かな時を切り取っていた。
静寂を堪能して美術館を出た。


東京駅の飲食街で昼食を食べようかと考えていたら、相棒から電話がかかってきた。
電話口からはこちらの静寂とは打って変わって戸惑いや慌しさが伝わってきた。
どうやら渋谷のフラショップは年末の休みだったらしく、
次に神田のフラショップを目指したが店の場所も名前もわからなくて往生しているようだ。

私にわかろうはずもないが、放ってもおけず慌てて駆けつけた。
結局は相棒のフラ仲間に店の名前と電話番号を教えてもらって一件落着した。

帰りに新宿で京都の水羊羹を買って帰ってきた。







暮の築地市場とお寿司


走に入り本格的な寒さが続いている。
毎年暮れの1日を使って築地に正月のお節料理の材料を買いに出かけるのが恒例だ。
今年の築地市場は例年ほどに混雑していなかった。

毎度の経路は、自宅から新宿に出て地下鉄で銀座に行く。
銀座から築地へは歩いていた。
相棒と2人のんびりと散歩がてらに歩くのだった。

しかし今年は寒い上に孫たちが一緒だ。

歩くのをやめて、新宿から大江戸線に乗って「築地市場」で降りた


築地の配置図
我々が主に行くのは「場外市場」と市場内の飲食店街「魚がし横丁」

市場内「魚がし横丁」の飲食店マップ

場外市場の様子(大きい通り)


築地場外市場は正月用の買い物客と観光客でやはり賑わってはいる。
しかし今年は中国からの団体客の姿は見なかった。

一通りお節の食材を買った。
今年は孫たちが蟹が食べたいと言うので「たらば蟹」を買った。



場外市場 蟹屋さん

場外市場 佃煮屋さん

買い物の後はいつも決まって市場内の飲食店街「魚がし横丁」で寿司を食べている。
しかし今回は孫たちが一緒で人数も多い。
魚がし横丁ではなく場外市場の寿司屋の方がいいだろう、と相棒と相談していた。
マグロの“初競り”“史上最高値で競り落とし”で有名な寿司チェーンに行ってみようか、となった。
今年の青森県大間産マグロ一本をなんと5649万円で競り落とした寿司屋だ。

チェーンといっても回転寿司ではない。
カウンター、テーブル席、座敷を持つ大きな寿司屋という感じで、何人も職人が立ち働き、
回転寿司よりは高級感があった。

店に入ったのが11時半頃だったので6人の席をすぐ作ってもらえた。

それぞれに寿司を堪能した。
相棒は思ったよりも安かったと喜んでいた。








帰りは銀座の瀬戸物の店まで歩くことに決めていた。
陶磁器を手頃な価格で売っている。
かねてから「うどん用の丼」が欲しいと思っていた。

築地本願寺の方へ交差点を渡ろうとした時、周囲の物々しい気配に気付いた。

警察車両が赤色灯を回して配備されていた。
帰ってからテレビのニュースをみて、中村勘三郎の葬儀が行われていたことを知った。


建設中の新・歌舞伎座



店を出てしばらく歩くと、新築中の歌舞伎座の玄関部分が姿を現していた。
表通りの店には早くも門松を飾っているところがあった。


正月支度の門松

ここにも。

この日の歩数は12000歩。



2012年12月22日土曜日

「メトロポリタン美術館展」と柚子と南瓜と・・・。


師走の街は20日を過ぎて慌しさを増していた。

21日冬至の日、所用があって東京・虎ノ門へ出かけた。
用事はすぐに終わったので、師走の街を銀座から有楽町まで歩こうかなと考えた。

しかし、、、

それだけの時間があれば気になっていた「メトロポリタン美術館展」に行けるか、、、。
上野の東京都美術館で開かれている。
「美術展に行こう」と考え直してJR新橋駅に出た。






新橋駅前の宝くじ売り場には「年末ジャンボ最終日」の長い行列ができていた。
近くの広場には特設ステージが作られて、警視庁が防犯活動をやっていた。


年末ジャンボの最終日
長蛇の列

年末の防犯アピール

地下鉄に乗って上野に向かった。
上野駅の急なスロープを歩いて地下から地上に出ると、工事中のビルが半分完成していた。
と思いきや、完成して「UENO3153(さいごうさん)」と名を変えてオープンしていた。
(外観の意匠が仮設の足場かと思っていた、、、。)
レストランなどの「グルメビル」のようだ。


「UENO3153」

西洋美術館の横を通って広場に出ると東京都美術館が目に入った。





8年前にアメリカ旅行をした時、ニューヨークのメトロポリタン美術館(メット)に行った。
メットは17部門300万点の美術品を所蔵する広大な美術館だった。
事前に何も調べていなかったので戸惑った。

相棒の知り合いから「フェルメール作品の写真を撮ってきて欲しい」と頼まれていたので、
ヨーロッパ絵画の部屋を探した。
ヨーロッパ絵画だけで30程の部屋があった。
フェルメールは何故だか廊下の壁に無造作に掛けられていた。
展示室の改修のようだった。
作品の脇に相棒に立ってもらってシャッターを押した。
警備員が遠くの方から、「ノーフラッシュ!」と一言叫んだ。

そんなことを思い出しながら東京都美術館に入った。
「東京都美術館リニューアル記念
 メトロポリタン美術館展  大地、海、空ー4000年の美への旅 」
「これぞメット、世界最高峰の美術館がやってくる」とある。




美術館展には133点の作品が展示されていた。
絵画54点、彫刻・工芸66点、写真13点。

テーマは「自然をどう捉えてきたか」である。
絵画を中心に、特にルノワール、ゴーギャン、ゴッホ、ミレーやバルテュスの作品を
時間をかけてゆっくりと観賞した。



レンブラント 「フローラ」

ティントレット 「モーセの発見」

ヤン・ブリューゲル(子) 「冥界のアエネアスとシュビラ」

ゴーギャン 「水浴するタヒチの女たち」

ブルトン 「草取りをする人々」
一見ミレーのよう、、、だがずいぶんと違う

こちらがミレー 「麦穂の山:秋」

ゴッホ 「歩きはじめ ミレーに拠る」
ミレーの作品を模写した

ルノワール 「浜辺の人物」

クールベ 「オルナンの風景」

バルテュス 「夏」

ゴッホ 「糸杉」

ルソー 「ビエーブル川の堤 ビセートル付近」

ターナー 「ヴェネツィア サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会の柱廊から望む」

モネ 「マヌポルト(エトルタ)」

セザンヌ 「レスタックからマルセイユ湾を望む」

ホーマー 「月光 ウッドアイランド灯台」

クロス 「海辺の松の木」 点描画

こんな「カエル」も、、、 「カエルの分銅」
メソポタミア/バビロニア時代 紀元前2000~1600年


いつものように絵はがきを買って美術館を後にした。


絵はがき


冬至の定番。
夕食で南瓜と小豆の煮物を食べ、
柚子湯に入った。


9500歩。